京都市左京区の国立京都国際会館が、周辺の山から下りてくるシカの食害に悩んでいる。国際会議で訪れた人たちの目を楽しませてきた日本庭園では、葉や樹皮が食べ尽くされる木が増え、周囲の自然景観との調和が損なわれてきている。開館から半世紀を経て老木の衰えも目立っており、同館は4年間をかけ、木々の植え替えや保護で庭園の再生を進める。
同館は、故丹下健三氏の右腕だった建築家の故大谷幸夫氏が設計し、1966年に開館。合掌造りと現代建築を融合させた外観で、比叡山を背にした穏やかな宝ケ池の風景との調和を重視した。白鳥が舞う池や茶室がある回遊式の庭園は、日本の里山や棚田に着想を得ている。
シカが出始めたのは10年ほど前。ここ2、3年は特に深刻で、葉や樹皮が食べられて木が弱り、芝生にふんが散乱するようになったという。庭園の樹種はサクラやウメ、ツツジ、サツキなど多様だが、木の老化と食害で枝ばかりが目立ち、「見るに堪えない状況」(同館職員)になった。
対策として、敷地内へのシカの侵入を防ぐフェンスを設置。今年1月には4カ年の庭園再生計画に着手した。作庭時のコンセプトは維持しつつ、老木化が進むサクラはしだれ桜や里桜など多品種を植栽する。
弱ったウメやアジサイ、ツツジなどを補うほか、食害が深刻なエリアはシカが食べないアセビを植えたり、木を網で覆ったりなどの対策を施す。サクラの後に見頃を迎える藤棚を設けるなど、四季折々の景色が楽しめる庭園を目指す。
再整備の作業は2023年に終了予定だが、木が根付き花を咲かすには5~10年かかるという。同館は「設計された大谷先生の思いを守りつつ、より身近で時代にあった庭園になるように整備を進めていきたい」としている。
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