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エンゲージメントが収益に勝る: NYT はデジタルイベントを、いかに国際化しているか? - DIGIDAY[日本版]

ニューヨーク・タイムズ(The New York Times:以下、NYT)は、対面イベントが相当な長期間にわたって開催されないという新たな現実に直面し、国際的視点を重視してコロナ時代のデジタルイベント戦略を練りはじめている。

たとえば、今年予定されていた20のライブイベントのリスケジュールを行った2週間後の4月9日、ロンドンに拠点を置くNYTの国際イベントチームは、初のデジタルイベント「グリーンハウス(The Greenhouse)」を開催した。気候変動がテーマの5部構成のこのシリーズは、NYTのジャーナリストと気候変動の専門家が中心となり、1970年4月22日に始まったアースデイの50周年記念日に合わせてリリースされた。

65カ国の1万人がこのシリーズを視聴し、そのうち16%が気候変動に関するNYTのニュースレター「クライメート・フォワード(Climate Fwd)」に登録した。興味深いことに、開催中はNYTの気候変動に関する報道全般に対して海外からのアクセスが急増した。またアンケート調査により、参加者にとってレポーターがもはや顔のない単なる署名ではなく、紙面やソーシャルメディア、デジタルイベントでフォローし、注目する人になったことがわかった。

「これこそまさに、我々が目指していたことだ」と、国際イベントマネージャーのホイットニー・リチャードソン氏はいう。「現段階では、英国でのイベントが目指すものは収益ではなく、ブランドを新たなオーディエンスに知ってもらうことだ。重要なのはブランド認知と関連性であり、我々には現場で取材する人々がいると知ってもらうことだ」。

海外オーディエンスの獲得が狙い

NYTにとって重要なのは、海外オーディエンスへリーチを拡大し、報道への投資をアピールすることだ。記事によってはオーディエンスの50%以上が米国以外で生じていることもあると、同社は述べる。ロンドンに拠点を置く50人体制のNYT編集チームにとって、英国内のニュースソースに対抗するのは困難だが、必ずしもそれを目指す必要はない。

「英語を理解する人々はみな我々の(潜在的)読者だ」と、NYTのヨーロッパ担当エディターであるジム・ヤードリー氏はいう。「我々は最初に読まれる媒体ではないかもしれないが、カバーする範囲は広い。我々の役割のひとつは、世界のオーディエンスに向けて、どこに住んでいたとしても心に響くようなやり方で、さまざまな話題を取り上げることだ。我々の読者層はけっして海外在住米国人だけではない」。

海外読者から一貫してよい反応が得られるおもなトピックは、気候変動、ジェンダー、地政学、文化だ。たった2人という小規模な国際イベントチームは、これらに焦点を定めていて、とりわけ気候変動は中核的な存在だ。たとえば、香港で開催された「炭素の犠牲者たち(Carbon’s Casualties)」と題する報道写真展では、NYTはギャラリーと協力しデジタル展示を実現した。同時にライフスタイルやもっと気軽なテーマについても検討していると、リチャードソン氏はいう。NYTはここ2年、エディンバラ・ブック・フェスティバルとの提携を続けている。

「グリーンハウス」で得られた教訓

NYTの次回のデジタルシリーズ「ネッティング・ゼロ(Netting Zero)」は7月9日に予定されている。ジャーナリストと各業界の専門家が気候変動対策について議論する内容だ。このシリーズは、2021年11月に延期されたグラスゴーでの国連気候変動会議と連動するNYTクライメートハブ(The New York Times Climate Hub)の前段階として準備されている。

「グリーンハウス」の教訓は「ネッティング・ゼロ」に活かされるだろう。たとえば、参加者は登壇者どうしがディベートを意識して互いに議論を戦わせることを求めている。NYTは、単発のデジタルイベントではなくシリーズとして展開することで、マーケティングと制作に時間をかけられることを学んだ。さらにアースデイなどの世界的イベントと連動させることで、参加者にとって身近でタイムリーなコンテンツを提供できる。

「デジタルイベントは飽和市場だ」と、リチャードソン氏はいう。「海外オーディエンスのエンゲージメントをさらに深化させるため、もっと頻繁に、もっと質の高いコンテンツを提供していきたい」。

目下の課題はやはりマネタイズ

いまのところ、すべてのデジタルイベントは参加無料で、Zoom上で開催されている。内部ではほかのプラットフォームもテストしていて、具体名は明かさなかったものの、リチャードソン氏によればより直感的な相互作用を促すものだという。「グリーンハウス」にスポンサーはいなかったが、リチャードソン氏によれば複数のブランドが関心を示し、現在は「ネッティング・ゼロ」のスポンサーとの交渉中だ。デジタルイベントの利益率は低く、発生する売上そのものも微々たるものだ。

もちろん、NYTの国際イベントチームには、より大規模で組織化されたニューヨークチームから学べるという強みもある。ニューヨークでは、部署を横断したデジタルイベント特別班の立ち上げ、ベストプラクティス・ワークフローの作成、機敏に動ける3人体制の制作ポッド(小グループ)の設置といった方法がとられている。

「国際チームは、ニューヨークのオフィスがデジタルイベントについてどう考えているかに合わせて動き出すことができた」と、リチャードソン氏は話す。「この不確実な時代に、バーチャル空間をどう使えばオーディエンスとジャーナリストが双方向の相互作用をもつことができるか? どうすれば人々がNYTのジャーナリズム全体から新しいコンテンツを見つける手助けができるだろうか?」。

イベントがトラフィックを呼び込む

イベントがトラフィックを呼び込むことについては、NYTには前例があった。昨年6月、NYTはポッドキャスト「デイリー(The Daily)」で1週間にわたり、ヨーロッパにおける国粋主義的政治の台頭をテーマにエピソードを配信した。ホストのマイケル・バーバロ氏は記者たちとともにロンドンで開かれた対面イベントに登壇した。これにより5本以上のエピソードをダウンロードしたユーザー数が増加したことから、多くの人々がシリーズの複数のエピソードを聴いたと考えられる(ただし具体的な数字は公表されていない)。また、シリーズ配信中は平均的な週に比べて海外オーディエンスも増加した。

リチャードソン氏は、海外オーディエンス向けにこうしたサイクルを続けることが目標だと述べた。ほかのパブリッシャーと同様、NYTもイベントとサブスクリプションの紐付けを模索しており、将来的に有料購読者限定イベントの開催も視野に入れている。

Lucinda Southern (原文 / 訳:ガリレオ)

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