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ホラー系イベント、新型コロナ自粛明けは「ニーズ増えると予想」 もはや夏だけではなくなったホラー需要増加の背景:紀伊民報AGARA - 紀伊民報

 新型コロナウイルスの感染拡大による自粛ムードが続く。今や明らかに現実世界の方が怖いといった空気も蔓延する昨今だが、やがて必ず訪れる“自粛明け”に備えて、あえて注目しておきたいのが「架空の怖さ」への継続的なニーズだ。今や「ホラー」は年中楽しめる人気コンテンツとなっており、夏の風物詩とされていたお化け屋敷は、一年中全国のテーマパークを賑わせている。さらには水族館や観光地でも開催されるようになった。娯楽としての「ホラー」需要がこれほどまでに増加した背景には、いったい何があるのだろうか。

【画像】「ここにあるモノが怖いから見せたくないよ」モフモフたれ目プードルの恐怖回避シーン

◆観光地や水族館までも侵食する「ホラー」 謎解き要素やVR技術など演出が多様化

 よみうりランドの「お化け屋敷ひゅ~どろ」、東京ドームシティ アトラクションズの「怨霊座敷」、富士急ハイランド「無限廃坑」など、全国のテーマパークに併設するホラー系体験型イベントは、夏に限らず年間にわたってさまざまな企画が展開されている。

 さらに水族館や観光地でも、平時であればホラーを盛り込んだイベントが季節を問わず次々と実施され、賑わいを見せているのが常。サンシャイン水族館が、お化け屋敷プロデューサー五味弘文氏とコラボした「ホラー水族館」は大反響を得ており、東京ワンピースタワーでの「難破船からの訪問者~蘇りしミイラの呪い~」イベントも、幅広い層にアピールしていた。

 演出も多様化しており、3DやVR、ドローンといったテクノロジーを駆使してハイテク感も感じられるものから、謎解き要素を組み合わせて推理も楽しめる企画までさまざまだ。

 こうして年中「ホラー」を楽しむ人が増えた背景には、体験型アトラクション感覚で「コト消費」を楽しむ人々の需要が増えたことがある。

◆“夏=ホラー”は日本だけ?「コト消費×お化け屋敷」で広がるビジネス商機

 演出が多様化し、話題性も相まってホラー系のイベントは今や重要なエンタメジャンルのひとつにまで成長している「ホラー」。その専門の制作・運営会社や、お化け屋敷プロデューサー的な肩書も増えており、ビジネス領域としても拡大していることがうかがえる。

 そもそも、夏=怪談というイメージは日本特有のもの。民俗学者・折口信夫氏が指摘したように、江戸時代の三大怪談と呼ばれる「牡丹燈籠」「四谷怪談」「番長皿屋敷」という芝居が夏に“涼み芝居”として大流行したことがきっかけとされる。また、夏の重要な行事である「盆」の時期、死者の霊魂を鎮める民俗芸能として各地の農村で行われていた「盆狂言」が、さらにその源流となっているとも。ホラー専門の制作会社である「株式会社 闇」の代表・頓花聖太郎(とんか・せいたろう)氏によれば、日本以外では特にホラーが夏のもの、という意識はないのだという。「日本の場合は、確かにお化け屋敷が年中稼働して人気を集めたりする状況になってきてはいますが、それでもやはりホラー系イベントは夏に集中しがち。これは実は単純に、夏休みが集客イベントにとって大事な時期だということと、伝統的に怖いものイコール夏という刷り込みが広く共有されているため、企画をプレゼンされた決裁権者がゴーサインを出しやすい、そんな傾向もあるのではないかと思います。それで夏にホラーというイメージがどんどん継承され、強化されてきた」

 ホラーにつきもののゾンビや幽霊などはキャラクター化しやすく、さらにグッズ化でも話題を作ることができる。イベント体験後にグッズを求める来場者も多く、サンリオピューロランドで昨年11月に開催された「ポムポムプリンゾンビランド」での限定グッズも、大反響を集めていた。

「現在のように、いわゆるお化け屋敷を含めた体験型ホラーイベントが人気になっているのは、大きく2つのきっかけがあったと思います。SCRAPさんの手がける『リアル脱出ゲーム』の登場と、スマホ・SNSカルチャーです。非日常で自分が物語の主人公になる疑似体験が提示され、それを翌日、学校で話す前にSNSで拡散できる環境が整った。ホラーはそもそもエンタテインメントのひとつのフォーマットですし、特に体験型コンテンツとの相性が非常に良い。イマーシブシアターという意味では、お化け屋敷はその誕生した時点から、没入感のある装置そのものとして機能してきました。
 ただ、体験を積み重ねることでどんどんお客様は目が肥えていく。日常から切り離されるミラーハウスという基本的にはシンプルな仕掛けから始まったものであっても、こちらも常に革新を続けていく必要はあります」

◆根っからのホラーファン 数は少ないが「無視できない影響力がある」

 頓花氏が代表を務める「株式会社 闇」では、昨年秋、大阪で世界初の参加型デスゲームイベント『シンガンシンパン』を全面プロデュース。また、VRを用いたウォークスルー型の「和風ハイブリッドお化け屋敷」を東京タワーにて松竹お化け屋本舗とコラボしたり、東京ドームシティアトラクションズ『和ハロウィーン』にて寝ながら体験するホラーVR「怨霊の金縛り屋敷」の企画・プロデュースしたりと、精力的な活動を続けている。

「KIKiiさん主催の『シンガンシンパン』は、『カイジ』『ライアーゲーム』的なデスゲームを疑似体験できるイベント。チームで参加してみんなで脱出ではなく、生き残れるのはひとりという疑似体験です。その場で行われる駆け引きのためのゲーム設計も含めて、謎解き、駆け引き、没入性、ボードゲームなど、注ぎ込めるすべての要素を投入してみた。負けてもおもしろかったね、というバランスになるような、存在しないジャンルのゲームをゼロから構築させてもらい、かなりの手応えを感じました」

 同社は、ホラーを使ったプロモーションを手がけることも特色。ヒット映画『犬鳴村』の冒頭映像を使ったプロモーションでは、恐怖回避スイッチを実装したPR用動画が話題になった。

「世の様々な娯楽コンテンツは、なんならすべてホラー化することができるのではないかとすら思います。『犬鳴村』PRではその逆を試してみたということです。今後、5G環境が整っていけば、VR体験の強度はどんどん上がる。音響効果も含めて、ホラーエンタテインメントの可能性は、今後ますます拡大していくのではないかと考えています」

 実際のところ、ホラー系イベントの参加者は、どのような層なのか。

「いわゆる根っからのホラーファンと、ホラー系コンテンツであることにそれほどこだわらないボリュームターゲットがいます。コアターゲットのホラーファンは、数こそ少ないものの、波及効果としては決して無視できない影響力があります。ボリュームターゲットは、SNS経由で気軽に行ってきました、凄い体験できましたと発信してくれるし、そうしたつぶやきがポジティブに評価され承認されることで、良い循環が確実に生まれているのだと思います。そういう意味では、コア層への訴求ポイントと、ボリューム層への訴求ポイントは、二重構造にしてバランスを考えていく必要があります。
 どちらの層であっても、体験を終えてどんな感想をつぶやき、次回にどんな人を連れてリピートしてくれるか、そのあたりまで含めて全体を設計していくことが重要だと考えています」

◆自粛明けのホラー需要は拡大する? ネガティブを吹き飛ばしすっきりできる作品を準備

 現時点では、新型コロナの影響は限定的だが、自粛ムードが長く続いた場合、その影響は計り知れないものになる、と頓花氏。「なにしろ現実が怖いわけで、ホラーなんてそんな状況では特に、不要不急のエンタメ代表格です。でも一方で、事態が落ち着いた後を考えてみると、その際にはおそらく、多くの商業施設やテーマパークなどで、いったん離れてしまった人を呼び戻すため、集客力のあるコンテンツがとても必要になるはず。そんなニーズに対して、いや実はここに面白いコンテンツあります! とすぐに応じられるよう、準備しておきたいと思っています」

 ウイルスの不安がなくなった後も、かつての震災経験がそうだったように、経済や人々の心情には、大きな傷跡を残しているであろうことも予想される。

「だからこそ、そんなネガティブな記憶や感情を吹き飛ばすような、心の底から叫び、怖がり、楽しみ、結果的にすっきりできる、そんなホラーエンターテイメントを作っていかなければ、と考えています。具体的には、ホラーVRとリアルイベントを組み合わせた形態は非常に手応えがあるので、どんどん進めていきたい。今は、まずは事態の沈静化が早く進むことを願うばかりです」

 今年の夏は、様々な閉塞感を払拭するような、とことん怖く、かつエンタテインメントな極上の疑似体験へのニーズが、より人々から求められることになるのかもしれない。さらなるホラーイベントの盛り上がりに期待したい。
(文/及川望)

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March 21, 2020 at 06:10AM
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