水郷で知られる福岡県柳川市に点在する江戸時代の庭園の多くが、取り壊しなどで姿を消そうとしている。川下りが行われる水路「掘割」の水を引き込んで池を造り、生活にも活用してきたのが特徴だが、所有者の転居や高齢化で手入れが行き届かないほか、宅地開発の進展などが原因だ。長い間、庭園の調査・保存にかかわってきた市民団体は「掘割とともに歴史を刻んできた日本庭園は、柳川の隠れた資産。消失してしまわないうちに保存に乗り出し、まちづくりに生かしてほしい」と訴えている。(九州総局 永尾和夫)
■生活用水に活用
南九州大学の永松義博名誉教授(69)=造園学、同県久留米市=は40年前から柳川の庭園を研究している。永松氏によると、市内に江戸時代に造られた34カ所の庭園が確認されている。ほとんどが武家屋敷の庭園で、このうち立花藩主ゆかりの「立花氏庭園」と、茶室としても活用された「戸島氏庭園」は国の名勝に指定されている。
これらの庭園はすべて、掘割から水を引き込んだ池を中心にした構造になっているのが特徴。この水を生活用水、防火用水として活用してきた。このため有明海の潮の満ち引きとも連動して変化する、この地域特有の風景を作ってきた。
■放置され宅地にも
だが、掘割の水を生かすためは日常的な手入れが必要で、放置すると蚊の大量発生やヘドロ堆積を招く。庭園は個人の所有で、一般には知られていないものがほとんど。所有者の高齢化が進んで空き家になり、宅地化も進展。同市新外町にあった名園が埋め立てられ、アパートが建設されたケースもある。近くの庭園も宅地化され販売中だ。
永松氏らが実施した令和元年まで3年がかりの庭園調査によると、34カ所の庭園のうち、4カ所がすでに消失。6カ所は放置されたままで、荒廃が進んでいる。
調査対象で完全な姿で残るのは友清邸(鬼童町)のみ。昭和の中ごろまでは引き入れた掘割の水を生活用水として使っており、庭に設けた取水場もそのままだ。
永松氏は「掘割を有機的に生かした庭園群は全国的にも例がなく、守らなくてはならない」との思いから平成27年、教え子らと市民団体「柳川水郷庭園保存機構」を立ち上げた。これまでに、やぶに覆われるなどしていた柳川市内の3カ所の庭園をボランティアで再生、整備した。
そのうちの一つが「石橋邸の離れ庭」(椿原町)。対岸の屋敷から掘割を挟んで眺める珍しい構造だ。一時は取り壊しの話もあったが、往時の姿を取り戻し、川下りの見どころになっている。
■探訪ツアーに関心
同機構は、こうした庭園の存在を知ってもらい、保存に向けた機運を高めようと、今年4月に「水郷柳川の隠れた名園探訪ツアー」を計画した。広大な屋敷に庭園が残る回遊式庭園の松本邸(椿原町)、川下りコースの水門近くに、江戸時代の石垣とともに残る津留邸(同)など現存する庭園だけでなく、消失した庭園跡を含め約20カ所を巡る予定だった。募集定員は30人だったが、福岡県内を中心に249人の応募があった。ツアーは結局、コロナ禍の拡大によって延期になったが、永松氏は「一般の人たちの庭園についての関心が高いのに驚いた。コロナ禍が落ち着いた秋か来春にツアーを実現したい」としている。
■貴重な地域資産
柳川市は27年に、川下りコースを含めた掘割と周辺の建築物が「水郷柳河」として、国の名勝に指定され、北原白秋の詩情を育んだ水辺の景観を保存していくことになった。
金子健次市長は、隠れた庭園について「地域の貴重な歴史資産として認識している」としており、今後、それぞれの庭の価値について再確認。所有者の意思を確かめた上で、保存の方法などについても検討していく方針だ。
永松氏は「このままでは水郷の観光資源でもある庭園が失われてしまう」と警鐘を鳴らし、「手入れに補助金を出すなど、行政が中心となって保全策を探ってほしい」と訴えている。
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May 27, 2020 at 05:01AM
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