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リポート「東京モダン生活」 東京都庭園美術館 「時代の転換点」を今知る意義 - 読売新聞社

建物をみる2020

東京モダン生活(ライフ)

東京都コレクションにみる1930年代

東京都庭園美術館(港区白金台)

2020年6月1日(月)~9月27日(日)まで

 国立科学博物館附属自然教育園に隣接し、武蔵野の面影を残す深い緑に囲まれた東京都庭園美術館の本館は、1933年に竣工した旧朝香宮(あさかのみや)邸。2011年から3年がかりで壁紙やカーテンなどを復元し、外壁を塗り替えるなど創建当時の姿により近づける改修工事が行われた。アール・デコ様式を今に伝える貴重な建築物として、2015年に国の重要文化財に指定された。

今回の展覧会は、年1回の恒例の「建物公開展」。通常の展示では置いていない家具調度を室内にあつらえ、普段は作品保護のために閉じられているカーテンも開け放ち、光あふれる空間の中で、宮邸当時の雰囲気を味わえる。写真撮影もできるので、例年人気の催しだ。

2014年に設けられた新館の展示スペースでは、朝香宮邸が完成した1930年代の東京の様子を絵画や家具、写真、雑誌、衣服などで紹介している。関東大震災と先の大戦に挟まれた短い時期だが、「帝都復興」の掛け声とともに近代建築が立ち並び、地下鉄が走り、「モガ・モボ」(モダンガール・モダンボーイ)が銀座を闊歩した。この時期、現在の東京に繋がる都市の原型が作られたといっても過言ではない。感染症によって、日々の暮らしぶりが大きく変わりかねない現代から見ても、転換点としてのこの時代は興味深い。

美術館へのアプローチ。終日、交通量の多い目黒通り沿いとは思えない深い緑にホッとする。敷地は周囲の保育園児の散歩コースにもなっていて、のびのびと遊ぶ子供たちの姿にも癒される。

美術館本館の正面。ほとんど装飾のないシンプルな作りがかえって印象的だ。

 朝香宮家は久邇宮朝彦親王の第8王子鳩彦王(1887-1981)が1906年に創設した。鳩彦王はフランス留学中の1925年にパリ万国博覧会(通称アール・デコ博)を観覧。全盛期を迎えていたアール・デコ様式に強く惹かれ、帰国後に建設した宮邸に、この様式の装飾をふんだんに取り入れた。旧朝香宮邸は、戦後は吉田外相・首相公邸、国賓公賓の迎賓館(白金迎賓館)として使用され、1983年からは東京都庭園美術館として一般に公開されている。

大客室(東京都庭園美術館提供)

大客室は、旧朝香宮邸の中でも、アール・デコの粋が最も集められているスペース。ルネ・ラリック制作のシャンデリア、扉上の半円形部分の装飾、エッチング・ガラスをはめ込んだ扉や大理石の暖炉の装飾など、この部屋では幾何学的にデザインされた花が主なモチーフとして用いられている。

大食堂に続く大食堂では、庭園の緑がまぶしい。来客時の会食用に使用された部屋。ルネ・ラリックのデザインによる照明器具やエッチング・ガラス扉などにくだものがモチーフとして用いられている。

大食堂のシャンデリア《パイナップルとザクロ》 ルネ・ラリック作(東京都庭園美術館提供)

ロイヤル・コペンハーゲン「三羽揃いのペンギン」 1902年ごろ(東京都庭園美術館蔵)

本館第二階段踊り場の照明(東京都庭園美術館提供)

調度品やちょっとした照明類にも、思わず目を奪われることたびたび。

妃殿下居間(東京都庭園美術館提供)鳩彦王妃允子内親王の居室。宮邸の建築に並々ならぬ情熱を注いだといわれ、部屋には妃殿下の趣味嗜好が至るところにうかがえる。

もうひとつ、見落としたくないのが各所に設けられた解説のパネル。それぞれの居室を見る際のポイントや、建材や技法などを事細かく説明してくれる。「担当学芸員のこだわりが詰まった、非常にマニアックに掘り下げられた内容です」(広報担当の鶴さん)

新館の外観(東京都庭園美術館提供)

新館の展示では、1930年代の東京を、東京都江戸東京博物館、東京都現代美術館、東京都写真美術館、東京都美術館、東京文化会館、東京都立多摩図書館が所蔵する多彩なコレクションで描き出す。

新館の展覧会場入り口
鹿子木孟郎《大正12年9月1日》年代不詳 東京都現代美術館蔵

1923年に発生した関東大震災の被災者たちを描いている。ここから新しい東京の都市作りが始まった。

大久保好六《街頭の近代色、所謂モガ》 1927年(昭和2年) 東京都写真美術館蔵

洗練された装いと佇まいに時間の経過を忘れる。

大久保好六《題不詳》1930~1935年(昭和5年~10年) 東京都写真美術館蔵

この時期、実際には洋装の女性はまだ少なかったが、和装のデザインはモダンなものに。

『観察絵本キンダーブック[キモノハナニカラ]』8輯11編(フレーベル館)1935年(昭和10)2月 東京都立多摩図書館蔵
洋装、和装ともおしゃれな親子連れの姿が絵本に登場した。

担当の吉田奈緒子学芸員は「東京五輪に合わせた企画として考えたが、新型コロナウイルスによってこの展示の持つ意味も変わった」という。「関東大震災によって、東京から江戸・明治の面影がなくなり、いわば『新しい生活様式』が生まれた。そして戦争によってあっとういう間にそれもなくなった。1930年代は、そうした歴史の転換点が俯瞰できる貴重な時代といえる。新型コロナで暮らしぶりが大きく変わるかもしれないこの節目の時期に、1930年代を知ることは貴重な体験になると思う」と語った。

詳しくは同館ホームページへ。

 (読売新聞東京本社事業局専門委員 岡部匡志)

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July 01, 2020 at 03:28PM
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